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サラダサイエンスインタビュー

今後のサラダサイエンス
〜「サラダ学」を書籍化、新しい栄養管理技術の開発、ハーモニーを楽しむサラダ〜

司会)今後の展望、夢について聞かせてください。

鈴木)現在、幅広く研究テーマを手掛けており、多少なりともサラダと関わることはすべてやろうと手を広げてきました。 その中で今後は、本質的にサラダに役に立つものは何なのかを絞って見極めていきたいなと思っています。 私がやってきた「食品冷凍学」は教科書もあるわけですが、いま「サラダ学」というものは無いわけですので、サラダを体系的に1冊にまとめた「サラダ学」の本を作りたいと思っています。 「1章 サラダとは」から始まり、サラダの衛生面に関する内容から、色、香り、その他色々な分野のサラダに関わる研究を取り入れて、これ一冊読めば大体サラダってものがわかるぞというような。 その後、それをベースにして、興味のある皆さんが研究にどんどん入っていただくと。 幅広い分野で活躍される方がサラダに対して興味をもってくれ、よりサラダ業界が発展するというのが、私の希望です。



司会)そうなると「サラダサイエンス」という言葉、「サラダを科学的に考える」という考え方がより浸透していくということになりそうですね。

鈴木)インターナショナルにも「サラダ学」というものは無いんですね。 日本の「ポテトサラダ」が、海外の人がイメージするものと必ずしも一致するかというとそうではない。

西田)ドイツだと、ソースをかけて食べるっていうのがメジャーなようです。 野菜もある程度限られているようですし、マッシュではない方がおいしいとされていたり。

鈴木)そうそう。また、ポテトサラダが東南アジアなどではどうなるのか、とかいう視点も気になっていて。 これまた冒頭でお話ししましたような社会学的な食文化っていうんですかね、そういうところにどう絡んでいくのかっていうところも、私としては興味があるんです。

司会)そうなるとテーマが尽きないですね。 ケンコーマヨネーズとしても、サラダサイエンスを広めていきたいという思いがあると思いますが、今後どういう形でそれを実現していくのかという夢はありますか?

西田)サラダをもっと身近に、もっと楽しんでいただくベースを発信していきたいと思っています。 日本のサラダの歴史を考えると、「サラダ」というものが海外から入ってきたのは戦前でしたが、衛生面の問題、材料や冷蔵設備がないことから、特別な時にしか作れないものでした。 普通に食べられるようになったのは、昭和30年以降にマヨネーズや冷蔵庫が普及したころ、私が子どもだったころです。今は、世の中がパラダイムシフトだとか、イノベーションだとか言われておりますけれども、それがまさにサラダサイエンスだと思うんですね。 サラダサイエンスの成果として期待しているのは、「パーフェクトサラダ®」という1食で全部の栄養が摂れる形ではなくて、その時自分に不足している栄養を把握し、必要なものを補うという方法です。 スマホと連動させ自分に足りない栄養素をタイムリーに知り、「今、こういうサラダ食べればいいよ」と教えてくれるということも今後実現していくと思います。 完全栄養食で錠剤や、ペースト状のもので栄養を摂ることもできますが、そうではなく、サラダの特徴でもある見た目の華やかさや、素材の風味、味の組み合わせを楽しみながら不足する栄養をしっかり補えるというものが、将来的に提供できたらという夢を描いております。

鈴木)今のは、栄養学的な観点からのお話しですが、こちらに関連して「ヒポクラテススープ」ってご存じですか?

西田)ギリシャの?

鈴木)そう、ヒポクラテスっていう、医学の父と言われるギリシャの哲学者が提唱したスープなんです。7種類の野菜をただ煮るだけ、調味料も加えず。それを飲むと、なんか元気になるっていうですよね。実際に自分で食べてみると、なんか調子がいいんですよ。まだ科学的に結論が出ていないのですが、野菜って1種類だけではなく、様々な種類を同時に摂取することによるバランスも大事なんじゃないかなって。ビタミンだとか、カリウムだとか特定の栄養素ばかりをよく耳にしますが、新しい機能性を持っている成分もどんどん発見されているし、栄養成分のバランスっていうところで、上手く調和するようなものが野菜から摂取できると、面白いのかな、と思います。新しい視点の「サラダの栄養」ですね。一つの物質だけではなく、ハーモニーですよね。人間、音を聞いても、単純な音だけでは楽しくないですが、ハーモニーが揃うと気持ちよくなるでしょってことで。

西田)そうですね、栄養も取れるんですけど、ハーモニーを感じ、食欲がわくようなものが、サラダだと実現できるのではないかな、と。 香辛料の成分とか、生姜もそうですね。 パクチーも、ちょっと前までは食べる人がいなかったけど、今は私達の食生活に定着しています。 栄養的な魅力もあるんでしょうが、それだけではない、心に響くというものもあるんでしょう。

鈴木)美味しいものを追求すると、ちょっと後ろめたい気持ちがある場合もあるんですが、きっとサラダは美味しさと健康の両方を満足させることが出来ると思うんです。 元々サラダって、イメージがいいですから。そういうところにサラダの魅力の根本的なものがあるんじゃないかな、と思っています。

司会)皆さんの夢が実現することで、サラダの未来や、出来れば健康的に楽しく生きたいと願う私たちの未来が明るいものになるような気がしてきました! 本日は、ありがとうございました。