統合報告書2025
Integrated Report 2025
社長メッセージ
ケンコーマヨネーズは食文化への貢献を通じ
さらなる企業価値向上に邁進します。



2024年に策定した中長期経営計画『KENKO Vision 2035』のビジョンである『サラダ料理で世界一になる』という目標に向かい、全従業員一丸となって邁進しています。ステークホルダーの皆さまに信頼され必要としていただける企業であり続けるため、大切にしている価値観、そして実施している様々な施策について語ります。
見つめ直し、思い描いたこと
日本の人口減少と高齢化、インフレによる原材料費や人件費の高騰、気候変動、円安、そしてロシアの問題に代表される地政学的リスクなど、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しています。
目まぐるしく変わりゆく時代のニーズや期待に応えて、新しい価値創造にチャレンジし、社会とともに成長し続けたい。当社はそのような考えの下、中長期経営計画『KENKO Vision 2035』を策定いたしました。従来なら3年間の計画としていたところを、2024年度から2035年度までの12年間とし、中長期的視点を取り入れています。
この中長期経営計画の策定中に、今一度企業理念を見つめ直しました。
私たちが大切に思い、守るべきものとして「心身(こころ・からだ・いのち)と環境」という理念を定め、「食を通じて世の中に貢献する。」ことを使命としました。心を豊かにし、体を健やかにし、命を守り、環境を大切にする。それらを、食を通じて実践していくことで社会に貢献し、信用・信頼され、長く存続し続ける会社を目指す。当社のミッション+パーパスとして、この理念を改めて再構築したのです。
私たちは日々、会社の中で様々な仕事をしていますが、ケンコーマヨネーズとしての企業活動はすべて、このミッション+パーパスに深くつながっています。従業員の皆さんとともに、当社の目指すべき方向を認識して、ともに大きく成長するべく邁進しています。
をかけ合わせた「サラダ料理」の世界
ケンコーマヨネーズの企業理念の下に「目指すべきもの」として『サラダ料理で世界一になる』というビジョンがあります。
「サラダ料理」という言葉は当社の創業期から存在していましたが、私たちのオリジナルの表現です。2000年に炭井(現会長)が社長に就任してからも、「サラダ料理」を軸にした考え方を発信し続けており、その思いは今も会社の文化として受け継がれています。四半世紀にわたり「サラダ料理」というジャンルを作り上げることをメインテーマとして取り組み、当社グループの成長の大きな原動力となったのです。
「サラダ料理」とは野菜が主役となって、主菜として楽しめる新しいスタイルの料理です。「食材」「調味料」「食文化」をかけ合わせて生みだされる、まさに無限の可能性を追求できる料理なのです。
「食材」としては、まず種類豊富な野菜が中心です。生野菜だけではなく、温野菜、カット野菜など様々な形態で登場します。ここに例えばローストビーフや海老、ホタテ、チーズなど、多様な肉類、魚介類、乳製品も加わります。次に欠かせないのが「調味料」です。当社が製造する、マヨネーズやドレッシング・ソース類の他、日本人になじみの深いしょうゆ、味噌、その他多様な調味料・香辛料を組み合わせ、豊かな味のバリエーションを創っています。
最後に加えるのが「食文化」です。和食に代表されるように、日本には古来からの食の伝統があります。独自の素材と調理法、出汁を多用するなど味付けにも独特のセオリーがあります。また地方に伝わる郷土料理など、私たちの足元には豊かな食の土壌が広がっています。
その文化を継承しながら、私たちが考える「サラダ料理」とかけ合わせ、さまざまな商品やメニュー開発をしてきました。
例えば、当社は和惣菜にしか使われていなかったごぼうをドレッシング類と合わせてごぼうサラダとして商品化し、日本に広く普及させたパイオニアです。他にも、賞味期間の長いロングライフサラダを日本で初めて商品化しました。
また業務用メーカーとして、B to Bのお客様には当社商品を活用した「サラダ料理」のメニュー提案を徹底。一般のお客様へは当社コーポレートサイトや公式通販サイトを通じて、当社商品だけでなく、お客様が求めるメニューやお役に立てるメニュー、市場を作り上げるメニューなど、「サラダ料理」の魅力やレシピを通じて「食文化」をつくる提案を続けています。これらの「サラダ料理」を巡る食文化への貢献が、日本の食卓に新たなシーンを加えています。
さらには、将来に向けての「食文化」開拓が重要だと考えます。新たな「サラダ料理」につながる新たな食材を探求する。また栄養や健康機能面からの食材研究にも注力しています。
『サラダ料理で世界一になる』というビジョンを確かな形にするために、海外への進出も視野に入れています。
「サラダ料理」の中には和惣菜や、生野菜に食材をプラスして主食になるようなものなど、海外でも人気のメニューがあります。食文化や宗教の違い、生野菜を食べる習慣がない国へも、炒める、煮る、蒸すなど、様々な調理法を駆使して「サラダ料理」をお届けすることができます。これまでにない食文化の概念を拡げていくのも私たちの役割だと考えています。そして「『サラダ料理』といえばケンコーマヨネーズ」と世界中から認識される企業になることが私たちの目標なのです。
お客様のお困り事を解決する
当社は創業以来、業務用食品の製造・販売に注力してきました。外食産業を中心としたお客様はまさに食のプロフェッショナルですから、常に最高レベルの品質が求められます。中でも重要な味付けについては自信を持ってお届けできる商品を作り続けています。
当社ならではのビジネスモデルとして、商品開発力が上げられます。お客様の細かなご要望を伺い、細部までマッチした商品をご提供する。たとえば同じポテトサラダでも、冷たいサラダに使うのか、温かい料理に使うのかによって、味やテクスチャーは一つひとつ異なります。お客様の用途にどこまでもフィットする商品の開発に邁進してきた、その経験こそが大きな財産となっていることを自負しています。
またお客様のお困り事を解決するべく、主食、パン、デザートなどあらゆる料理に関して、メニュー提案が可能です。お客様のもとに商品を持っていくだけではなく、メニューの中にどう組み合わせていくのか具体的にお見せすることが重要なのです。
私が入社した1988年以前からメニュー作りの専門部署があり、日々、新作メニューを作り続けていました。それは現在まで継続し、約2万8,000種類ものメニューの蓄積があります。この豊富なメニューの資産のなかから、市場に合った商品を開発して世に送り出すこともあります。そして、業務用食品メーカーとして業務用のお客様の抱える課題を解決し、市場を演出するような商品やメニューの開発・提案する場面こそ、「サラダ料理」という分野をひたすら突き詰めてきた当社の個性が生きる場面です。
もう一つ、当社には原料から生産・販売までの一貫したサプライチェーンという大きな強みがあります。
自分たちで原材料を調達し、社内の商品開発メンバーが企画をし、それを生産できる形に落とし込み、自社工場で商品化します。工場では徹底した品質管理を行い、営業担当者がお客様のもとへメニュー提案とともに商品をご提案に伺います。全国に生産工場と販売の拠点があるので、どの地域のお客様に対しても安定した商品供給が行えます。これらの過程をすべてケンコーマヨネーズグループ内で実施しているのです。これが業務用食品という厳しい市場における競争優位につながっていると思います。
また食品に携わる会社として、原材料の調達については様々なリスク対策を取っています。2年ほど前、高病原性鳥インフルエンザの影響で卵の入手が困難になった時期があり、生産調整をするなど非常に苦戦したことがありました。その経験を活かして、産地を分散し、海外からの調達ルートを確立するなど、原料の調達が不安定にならないように体制を整えているのです。
ポテトサラダの材料であるばれいしょは、主に北海道の契約農家から調達しています。私も今年北海道に視察に行き、農家の方と対話をしてきました。契約農家の方とは勉強会をしたり、作物の成長を適時確認したりと連携をとっています。しかし、天候などの外部要因はありますので、ある程度は産地を分散させ、収穫量に大きく影響がでないような体制をとっています。また病害虫に強い品種、ポテトサラダに適した品種などの研究も進めています。
再構築を目指して
当社の事業は大きく3つのカテゴリーに分かれています。
1つ目は調味料・加工食品事業で、売上全体の8割を占めます。2つ目は総菜関連事業等、3つ目は「Salad Cafe」などその他の事業で、合わせて2割というポートフォリオになっています。
ケンコーマヨネーズ本体では、ロングライフサラダなどのサラダ・総菜類、和惣菜、マヨネーズ・ドレッシング・ソース類、タマゴ加工品などを製造し、業務用ルートで販売しています。
連結子会社では、スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けにサラダ、和洋惣菜、デザートなどを製造し納品しています。「Salad Cafe」などはデパ地下やスーパーマーケットで対面販売のサラダショップを運営しています。
総菜関連事業等と「Salad Cafe」などのその他事業は一般消費者にもっとも近い業態なので、お客様のご意見やご要望が直接入ってきます。総菜の販売についてはスーパーマーケットなどへ直接販売しますから、ここでも売れ筋商品などの情報が日々入ってきます。これを本体に取り入れて、人気が高い商品があれば開発して市場へ供給するなど、徹底したマーケティングによりPDCAサイクルを循環させています。
事業ポートフォリオの再構築は、グループ全体の安定化を図る上で大変重要な施策です。2020年から始まったコロナ禍において外食産業は大変な苦境にありました。一方でスーパーマーケットなど量販店の売上が好調で、経営の下支えとなりました。当時は業務用より家庭用の方が商品の動きも活発だったのです。
これらを考え合わせ、現中長期経営計画においては、事業ポートフォリオを拡張していくという方向で考えています。特に今、注目しているのは海外事業とEC事業です。
海外事業については、マヨネーズ、ドレッシング、一部のロングライフサラダを約40の国と地域に輸出販売しています。特にメイド・イン・ジャパンのマヨネーズは品質に定評があり、外国でも高評価をいただいています。
現在の輸出先は香港、オーストラリア、アメリカなどが中心ですが、今後は取引国をどんどん増やしたいですし、進出した各国でも売上を拡大させなければなりません。距離の近い東南アジアは今後、注力していくべき地域だと考えています。2035年度には海外事業が連結売上高に占める割合が10%以上になるよう目標を設定しています。
未来へ繋げる
中長期経営計画の最初の4年間に当たる「Phase 1:事業構造の改革」の初年度を終えて、成果が見え始めています。戦略ごとにメンバーが選定され、計画内容、スケジュール、目標などが明確になっており、2025年度以降、さらなる成果を上げていかなければなりません。
『KENKO Vision 2035』では「成長戦略」「スマート化」「人材投資」「サステナビリティと社会的責任」という4つの基本戦略を掲げています。
「成長戦略」では既存事業の収益基盤強化をうたっていますが、まず手がけたのが商品の統廃合です。長年の開発により増えていた自社製の商品を約200品目削減いたしました。これにより包材や原料等の取扱いアイテム数が減少し、倉庫スペースが広がり、効率よく動けるようになりました。また商品を集約することで、1回ごとの製造量が増えます。すると歩留まりが向上し、管理コストが下がるなどのメリットがあります。
中長期経営計画2年目に向けては、EC事業への取組みを強化しています。現在、通販のお客様の半分はB to Cの一般コンシューマーの方々で、残り半分がレストランやカフェなどを経営されている個人事業主の方々です。個人事業主のお客様にご購入いただきやすいセット商品を用意させていただき、定番品のほか新商品なども含めることで、これまでにお客様が試したことのない味を知っていただき、さらなる注文につながるように販売を強化します。
「スマート化」については昨年度に基幹システムの入れ替えを行ったことで、さまざまな部署の機能がつながりました。営業支援の分野では日報を効率化し、お客様ごとの営業履歴をすぐに見られるようにするなど、お客様にとってもメリットのあるシステムを構築しています。
「人材投資」は中長期経営計画の確実な実行のために、特に注力している分野です。
昨年、従業員意識調査を実施し、ワークライフバランス、やりがい、人材育成などの分野で課題が見えてきました。現在、各部署でエンゲージメント向上のため、課題を明確にし、そのための対策を実行する、という一連のアクションプランを立てて活動を始めました。また、毎月、上司と部下が1on1ミーティングを行っています。上司と部下が1対1でコミュニケーションを取りながら、互いの考えを理解しあい、目標達成に向けてともに進んでいく環境を整えています。
新中長期経営計画を従業員に発表する際も2024年3月に東京と神戸で会場を設け、対面で行いました。各戦略のリーダーを務める取締役が社員の前に立って発表を行い、12年後のあるべき姿について語りました。また秋には社員との個別進捗報告会を開催しました。5〜10人の社員グループを作り、各取締役が直接対話を行います。質問や要望などを聞きながら、社員が今、取り組んでいる仕事が中長期経営計画のどこにつながっているのかを理解してもらいます。
個々人の仕事の集積が、経営計画推進の強力なエンジンになっているということを実感してもらうことをねらいました。食品産業の一翼を担う上場企業として「サステナビリティと社会的責任」についてのアクションも欠かせません。
当社は北海道産のばれいしょを使ってポテトサラダを作っていますが、生産過程でばれいしょの皮が廃棄物になります。これを捨ててしまうのではなく、工場内で発酵させて液状飼料を作り、養豚農場へ供給しています。
また本来は可食部でありながら廃棄されていた食材を活用する「アップサイクル商品」の開発も実施しています。わかめの養殖が盛んな宮城県では、副産物である元茎わかめが活用されず、廃棄量が増加し問題になっていました。そこで地元の漁協および企業と連携し、『コリっとおいしい冷凍宮城県産元茎わかめの中華仕立て』などの商品を開発。外食のサステナビリティフェアで採用されるなど、当社の取組みに対する認知が広がっています。他にも森林保全活動にも取り組んでおり、登山が好きな私もいずれ活動に参加したいと考えています。
世界一の存在へ
持続的な企業価値向上を目指す上で、資本コストや株価を意識した経営は必要不可欠です。
財務指標としてROE8%以上を掲げており、ROEは2024年度の価格改定の効果と、自己株式の取得などにより8.9%となりました。一方、PBRについては、株価下落の影響等により2024年度は0.7倍となりました。収益性を向上させるべく変革を行ってきましたが、今後はさらに成長戦略を着実に遂行し、稼ぐ力を強めなければなりません。
2026年2月、アクセスのよい都心部へ東京本社を移転する予定です。新社屋では現本社にもある「Cooking Lab」のようなキッチンスペースを設け、当社の商品を使ったメニュー作りや試作をお客様とともに実施したり、一般の方向けの料理教室を行うなど、これまで以上にお客様との接点を拡大して提案機会やコミュニケーションを増やし、アイデアを出し合って新たな価値を創造していくとともに、従業員の採用強化についても意識しています。
これまで本社内にあった事業開発本部(研究部・開発部)と品質保証室については別途、研究に専念できる環境を用意します。これからの時代を生き抜き、成長していくためには、マーケットインの発想が欠かせません。そのために開発力の強化は重要で、必要な施策を速やかに実施していきます。
株主還元はDOE(株主資本配当率)を重視いたします。2024年度は1株あたり43円の配当を行ったため、DOEは2023年度より0.4ポイント上がり1.7%となりました。2035年までにDOE2.5%以上の水準とする計画としており、今後も株主還元を重視してまいります。
色とりどりの野菜に肉や魚などの素材が入り、見た目も美しく、食べることで体が健やかになり、心豊かな暮らしを創る「サラダ料理」は、私たちが掲げている企業理念を象徴する存在です。『サラダ料理で世界一になる』というビジョンとともに、『KENKO Vision 2035』に掲げた12年間の計画は着実に実行し、目標は必ず達成させなければなりません。
ステークホルダーの皆さまには計画が順調に進捗し、当社が持続的に成長していく過程を見守っていただきますようお願い申し上げます。
